海外展示会への参加、そして越境EC への商品掲載が目的になっている自治体が余りにも多い。しかし残念ながら、準備のない海外展示会への参加と越境EC への商品掲載は、時間と金を無駄にするばかりか、実施後に何の学びも得られないことがほとんどだ。これらは目的ではなく、日本の商品を海外に売るための手段の一つなのだが、その認識を持っている自治体職員は少ない。
日本の商品が売れる時代の終焉
筆者はシンガポールに移住し9年目になるが、この間に、驚くほどたくさんの日本の商品/サービスがシンガポールで気軽に手に入るようになった。なぜこれらの製品やサービスがシンガポールで受け入れられているのか?
それは、一昔前と比べ、オフライン販売(海外に商品を輸出し商品を販売)量が増加したことと、それに加えオンライン販売(越境EC、海外EC で商品を販売)がより広く普及したからだろう。
その中でも売れている商品は、市場調査とマーケティングを行い、お客様に届けたい商品の物語(ストーリー)を明確にし、適切な値付けおよび必要なプロモーションを行い、最適な商流を構築し現地パートナーがしっかり儲けられる仕組みを構築しているからだ。一昔前、日本の商品が海外で気軽に入手できなかった時代には、「日本の商品」に現地パートナー/ディストリビューター候補が群がった時代があったようだが、今は違う。今では「日本の商品(Made in Japan)」という要素は、商品の魅力を構成する数多ある項目の中の一つになっている。
準備の無い海外展示会は無駄
「海外展示会」は、お手軽なオフラインでの海外展開手法と認識されているが、準備をせず出展しても何も得られることはなく、時間と金が無駄になる場合が多い。
なぜかというと、理由は二つある。一つ目は、準備をしていない展示会には、本気で日本の商品を扱いたい現地パートナー/ディストリビューターはほとんど来場していないため、そして二つ目は、出展企業側および自治体側の準備不足で商談につながらないためだ。
一つ目について、多くの場合、来場している現地パートナー/ディストリビューターは、現地主催者が懇意にしている仲の良い人、もしくは来場してくれたら費用を払う、という形で来場している頭数合わせである場合が残念ながら多い。商品に興味のある現地パートナー/ディストリビューターを展示会に招聘するためには、事前準備(国内類似商品との差別化、定量的かつ定性的ストーリーの作成、商流構築、商品価格(日本での卸価格と海外での卸価格)の仮設定、事前テストマーケティング、取引条件など)を行うことが必須となる。二つ目については、先ほど述べた事前準備未着手の状態で出展する企業が多く、主催者(受託者)も自治体(発注者)も準備の大切さを伝えておらず、仮に運よく現地パートナー/ディストリビューター候補が商品に興味を持ってもらったとしても、その後商談が進展する確率はほぼゼロとなる。
残念ながら、上記二点を認識している自治体はほぼ皆無で、主催者も言われたからやっている、というのが実態で、展示会を行うことが目的になってしまっている。
これでは、出展企業にとっても自治体にとっても、何の学びもなく、次年度に生かせる経験は得られない。ちなみにアンケートフォームをしっかりと準備し、現地の方の声を集めることを目的とした展示会や試食会は大いに意義があり、そのフィードバックをもとにローカライズを進めるとより売りやすい商品ができあがる。
EC に出しても売れない
さて、これまでは海外展示会(オフラインの販路開拓)の話を述べてきた。しかし、EC にしろ展示会にしろ、商品を売るための本質は変わらない。繰り返しになるが、売れる商品は、「日本の商品」だから売れるのではなく、市場調査とマーケティングを行い、お客様に届けたい商
品の物語(ストーリー)を明確にし、適切な値付けおよび必要なプロモーションを行い、最適な商流を構築し現地パートナーがしっかり儲けられる仕組みを構築しているから売れるのだ。
どうやって日本の商品を売るか?
海外展示会も越境EC も、商品を売るための一つの手段であるということはこれまで述べてきた。では、どうやったら日本の商品が売れるのだろうか?最初にやるべきことは、日本国内での商品の差別化ストーリーを作ること、そして、そのストーリーを伝えながら現地でテストマーケティング(試食会や試用)を行い、現地の消費者/顧客/販社の声を聴くことだ。なぜなら日本で売れているものがそのままの見せ方や
伝え方で売れるということはほぼなく、表記やデザイン、味を現地の人に受け入れられるよう現地化(ローカライズ)することで受け入れてもらえる可能性はグッと増すからだ。
上記について気になる点がある方は、お気軽にお問い合わせください。
筆者 安田哲